Ⅶ 論理・解析・その先へ · ステージ 36 — 極限と導関数 · 36.3 導関数の本質全レッスン →
ステージ 36 · 極限と導関数

導関数の本質:概念と幾何学

「ここでの変化の速さ」を一つの式で表し、そこから接線を描く。

対象年齢 15〜19歳 · 一歩一歩、論理的に
曲線 f(x) = x²(青)とその (1, 1) における接線(緑)、そして導関数 f′(x) = 2x(スレート、破線)— f の傾きを点ごとに表したもの。

レッスン 36.2 では、間隔 Δx がゼロに近づくにつれて 割線接線 に傾いていく様子を観察しました。その極限の傾きには名前と記号が与えられています:f′(x₀)、すなわち x₀ における f の導関数です。このレッスンではそれをしっかり定義します。縮んでいく過程全体を一つの式で書き、f(x) = x² に対して手計算で求め、ちょうど 2x₀ になることを確かめます。幾何学的にも読み取ります — 導関数は接線の傾きであり、点-傾き式から接線の方程式が得られます。次に大きな一歩:すべての点での傾きを集めると、f′ は一つの数ではなく新しい関数になります。最後に注意点として — 微分可能な曲線は必ず連続ですが、y = |x| のような鋭い角点は連続でも導関数を持ちません。なぜなら左から近づいたときの傾きと右から近づいたときの傾きが一致しないからです。

36.3.1 導関数の定義

x₀ から x₀ + Δx までの区間における f の平均変化率は、その2点を結ぶ割線の傾きです:

平均変化率 = f(x₀ + Δx) − f(x₀)Δx

これが差分商です。レッスン 36.2 の核心は:一つの Δx で止まらず、縮ませ続けることでした。商が Δx → 0 のとき向かっていく値が、瞬間変化率です。これに名前をつけます:

f′(x₀) = limΔx → 0 f(x₀ + Δx) − f(x₀)Δx

例題 — f(x) = x² を手計算で求める

差分商を作り、Δx を消すに整理します:

(x₀ + Δx)² − x₀²Δx = x₀² + 2x₀Δx + Δx² − x₀²Δx = 2x₀Δx + Δx²Δx = 2x₀ + Δx

分母の Δx が消えました — もう 0/0 の形ではありません。ここで Δx → 0 とすると、残った Δx が消えて f′(x₀) = 2x₀ が得られます。したがって f′(2) = 4、f′(−1) = −2、f′(0) = 0。x² の任意の点における傾きは、x 座標のちょうど2倍です。

ここでのポイント:Δx = 0 を代入しない(それは 0/0 になります)。先に整理し、それから極限を取る。この「代数的整理 → 極限」という2段階の操作が、定義から導関数を計算する際の核心です。

試してみよう Δx を縮めて、商が 2x₀ に収束する様子を観察する
f(x) = x² において固定点 x₀ = 1 での差分商は 2x₀ + Δx = 2 + Δx に整理されます。Δx を小さくして、緑色で示された極限値に近づく様子を読み取ってください。
Δx 2

36.3.2 接線の傾き

幾何学的に見てみましょう。曲線上の一点を選んで拡大します。拡大すればするほど、その点の周りで曲線はまっすぐに見えてきます — 十分近づくと、曲線は一本の直線と見分けがつかなくなります。その直線が接線であり、その傾きが f′(x₀) です。これを局所線形性と呼びます:十分拡大すれば、滑らかな曲線は接線そのものになります。

(1, 1) 付近で f(x) = x² を拡大した様子。接線の傾きは f′(1) = 2(f′(x) = 2x から正確に求まる)。近づけば近づくほど、青い曲線は緑の直線に寄り添います — この急峻さが導関数です。
f′(x₀) の二つの顔

解析的: f′(x₀) は差分商の極限 — 瞬間変化率。幾何学的: f′(x₀) は x₀ における y = f(x) の接線の傾き。同じ数を二つの視点から見ています。

36.3.3 接線の方程式を求める

傾きがわかれば直線はすぐに書けます。接線は接点 (x₀, f(x₀)) を通り、傾きは f′(x₀)。これを点-傾き式 y − y₀ = m(x − x₀) に代入すると:

y = f′(x₀)·(x − x₀) + f(x₀)

例題 — x₀ = 3 における x² の接線

接点:(3, f(3)) = (3, 9)。傾き:f′(3) = 2·3 = 6。点-傾き式:

y = 6(x − 3) + 9 = 6x − 18 + 9 = 6x − 9.

接点の確認:x = 3 のとき y = 6·3 − 9 = 9。✓ この直線は (3, 9) において放物線にちょうど接しています。

試してみよう 接点をスライドさせて接線の方程式を読む
f(x) = x² 上で x₀ をドラッグします。傾きは正確な導関数 m = f′(x₀) = 2x₀(べき乗則から)であり、点-傾き式が y = m·x + b を自動で組み立てます。
x₀

36.3.4 導関数はそれ自体が関数である

これまで f′ は一点における一つの数でした。しかし、その点に特別な意味はありません — すべての x がそれぞれの接線と傾きを持っています。「x ↦ x における f の傾き」というルールを集めると、全く新しい関数、導関数 f′(x) が出来上がります。f(x) = x² の場合、そのルールは f′(x) = 2x — 一本の直線です。

f と f′ を同じ座標軸に描くと、関係がはっきりします。f が増加しているところでは傾きが正なので、f′ は x 軸のにあります。f が減少しているところでは、f′ はにあります。f が平ら(放物線の底点)なところでは、f′ はゼロを横切ります。任意の x における緑の曲線の高さは、そこでの青い曲線の急峻さにちょうど等しくなります。

試してみよう x を動かして「f′ の高さ = f の傾き」を確認する
の曲線は f(x) = x²;緑の破線はその導関数 f′(x) = 2x。マーカーを動かすと:f 上の接線の急峻さと f′ の高さが等しくなります — どちらも 2x として正確に計算されています。
x
古い関数から新しい関数へ

微分は関数 f を受け取り、別の関数 f′ を返します。f′ をもう一度同じ操作にかけると f″(2階導関数)が得られます — 傾き自体の変化率です。導関数は繰り返すことのできる動詞です。

36.3.5 微分可能性と連続性

曲線が x₀ において接線を持つなら、そこに断絶はあり得ません — ジャンプや穴があれば、割線は一本の直線に収束せず発散してしまいます。したがって 微分可能 ⟹ 連続:導関数を持つことは、より強い条件です。

この矢印は逆には向きません。曲線は完全に連続 — ペンを離さずに描ける — でも、ある点で全く導関数を持たないことがあります。教科書的な例が角点:x = 0 における y = |x| です。角点に左から近づくとすべての割線の傾きは −1;右から近づくと傾きは +1。二つの片側極限が一致しないので、唯一の傾きも唯一の接線も存在せず、f′(0) は存在しません — たとえ関数が 0 で連続であっても。

試してみよう y = |x| の角点:左の傾き対右の傾き
角点 (0, 0) にどちら側から近づくかを切り替えてください。左からだと割線の傾きは −1;右からだと +1。一致しないので、|x| は 0 で導関数を持ちません — それでも連続(つながっています)。
注意

連続は微分可能を意味しません。 |x| の角点は連続ですが 0 で導関数を持ちません — ペンを離さずに描けるだけでは不十分で、両側から見た傾きが一つの値に一致しなければなりません。

また、接線は割線の極限であり、単に「一点で触れる直線」ではありません。接線は曲線を横切ることもあります(y = x³ の原点における接線は曲線を通り抜けます)。一方、角点に一点でかすりつく直線は接線ではありません。

まとめ

導関数、一目でわかる
概念内容
定義f′(x₀) = limΔx→0 [f(x₀+Δx) − f(x₀)] / Δx
手計算の例f = x²:商 = 2x₀ + Δx → f′(x) = 2x
幾何学f′(x₀) = x₀ における 接線の傾き(局所線形性)
接線の方程式y = f′(x₀)·(x − x₀) + f(x₀)(点-傾き式)
f′ は関数各 x での傾きを集める;f 増加 ⟺ f′ > 0
滑らかさ微分可能 ⟹ 連続;角点(|x|)が反例

練習問題

  1. 定義を使って f(x) = x² の f′(x) を求め、f′(−3) を計算しなさい。
    解答を見る
    [(x+Δx)² − x²]/Δx = (2xΔx + Δx²)/Δx = 2x + Δx → Δx → 0 より f′(x) = 2x。したがって f′(−3) = 2·(−3) = −6
  2. x₀ = −1 における f(x) = x² の接線の方程式を求めなさい。
    解答を見る
    接点:(−1, 1)。傾き:f′(−1) = 2·(−1) = −2。点-傾き式:y = −2(x + 1) + 1 = −2x − 2 + 1 = −2x − 1。確認:x = −1 のとき y = 2 − 1 = 1。✓
  3. f(x) = x² において、接線が水平(傾き 0)になる x はどこか?その点の座標は?
    解答を見る
    水平とは f′(x) = 0 を意味します。f′(x) = 2x なので、2x = 0 → x = 0。点は (0, 0) — 放物線の底点で、そこでの接線は x 軸です。
  4. 定義を使って直線 f(x) = 3x + 5 の f′(x) を求めなさい。答えは予想通りでしたか?
    解答を見る
    [(3(x+Δx)+5) − (3x+5)]/Δx = (3Δx)/Δx = 3 で、Δx が残らないので、すべての x について f′(x) = 3。直線の傾きは定数 — それがまさに導関数です。
  5. f(x) = |x| が x = 0 で連続だが微分可能ではない理由を説明しなさい。
    解答を見る
    連続:limx→0 |x| = 0 = |0| なので、値と極限が一致 — 断絶なし。微分不可能:右からの割線の傾きは +1、左からは −1 で、差分商の片側極限が一致しないため f′(0) は存在しません。角点には唯一の接線がありません。
  6. f(x) = x² の導関数は f′(x) = 2x です。f が増加する区間はどこか?f′ の符号はそれをどのように教えてくれるか?
    解答を見る
    f′(x) = 2x が正になるのは x > 0 のとき。よって f は (0, ∞) で増加;x < 0 では f′ が負なので f は (−∞, 0) で減少。傾きが正のところで曲線は上がります — f′ の高さが f の急峻さです。

🎯 確認テスト

6問で理解を定着させましょう。正しいと思う答えをタップしてください。

§ 先生・保護者の方へ

このレッスンでは導関数の正式な定義 — f′(x₀) を差分商の極限として — と、接線の傾きとしての幾何学的意味を学びます。HSF-IF.B.6(区間における変化率)を基に瞬間変化率へと発展させ、定義から f′ を計算し点-傾き式で接線を組み立てることは HSF-BF(関数の構成と解釈)に対応します。f′ がそれ自体関数であること、そして |x| の角点が「連続は微分可能を意味しない」の反例であることは、AP Calculus AB 導関数の概念的な基礎そのものです。家庭での発展問題として:「傾きがすべての x で正なら、関数は下がれるか?」と問いかけてみてください。

eastmath.com · ステージ 36 · 36.3 導関数の本質 · 一歩一歩、論理的に