Ⅵ 数え方・確率・統計 · Stage 33 — 確率 · 33.7 期待値と分散全レッスン →EN日本語
Stage 33 · 確率

期待値と分散

たった2つの数が分布全体を語る。平均してどこに落ち着くか、どれだけ揺れるか。

14〜18歳 · 一歩ずつ、丁寧に考える
1個のサイコロ。6面は等確率なので、期待値重心 E(X) = 3.5(緑の支点)に置かれる——サイコロが実際には決して示さない値だ。琥珀色の帯は標準偏差 σ ≈ 1.71 分だけ両側に広がり、ばらつきを示す。

分布表は確率変数 X についてすべてを教えてくれる——取りうるすべての値と、それぞれの確率を。しかし「すべて」は情報過多なことが多い。友人に「そのゲームはやる価値があるか」と聞かれたとき、表を暗唱するのではなく、1〜2個の数で答えるはずだ。X は平均してどこに落ち着くか?それが期待値 E(X)、すなわち確率加重平均——分布全体の重心だ。そしてX は平均の周りをどれだけ激しく揺れるか?それが分散 D(X) とその平方根 σ(標準偏差)だ。2つの分布が同じ中心を持ちながら、かけるリスクの感覚がまったく違うことがある。今日はどちらの数も、分布そのものから誠実に構築し、リスクの重さを測る道具として使おう。

33.7.1 期待値:長期的な平均

あるゲームを何度も繰り返すと想像してほしい。毎回得られる金額はランダムに変わる。長期的に見ると、1回あたりの平均獲得額はいくらになるだろうか?ある値 xi が全体の pi の割合で現れるなら、多数回のゲームを通じて xi は合計に正確に pi の頻度で貢献する。各値をその出現頻度で重み付けして足し合わせると、長期的な平均が得られる。この加重和には名前がある。

数学的期待値

x1, x2, …, xn と確率 p1, p2, …, pn を持つ離散確率変数 X に対して、

E(X) = x1p1 + x2p2 + ⋯ + xnpn = Σ xipi

これが確率加重平均だ。各値はその確率に等しい力で平均を引き寄せる。分布を棒グラフとしてシーソーの上に置いたとき、E(X) はそれが釣り合う1点だ。

公正なサイコロで X = 出た目とすると、各面の確率は 1/6 なので、

E(X) = 1· + 2· + 3· + 4· + 5· + 6· = 21/6 = 3.5.

注目してほしい。3.5 はサイコロの目には存在しない。期待値は重心であって、特定の1回の出目を予測するものではない——多数回の平均は 3.5 に近づくが、実際に 3.5 が出ることはない。結論:E(X) は各値をその確率で重み付けして求める重心であり、分布全体を1つの数で表す。

公正なサイコロの分布。6本の等しい緑の棒、それぞれの高さは 1/6。確率はすべて ≥ 0 で、合計は 1。緑の支点が釣り合いの点 E(X) = 3.5 を示す。
試してみよう 質量を動かして重心の移動を見る

1, 2, 3, 4 の4値分布。スライダーを動かして小さい値から大きい値へ確率を移すと、緑の支点 E(X) が重みについてくる様子を観察しよう。

大きい値へ重みをシフト

33.7.2 期待値の性質:平行移動とスケーリング

X を賞金とする。カジノがルールを変更して、支払額がすべて2倍になり、さらに一律 $1 の手数料が引かれるとしよう。新しい賞金は Y = 2X − 1 だ。新しい平均を求めるために分布を作り直す必要があるか?いや——期待値は線形変換をそのまま透過する。

期待値の線形性

E(aX + b) = a·E(X) + b

言葉で言えば:X を a 倍すると平均も a 倍になり、X に b を足すと平均も b だけずれる。各値 xia·xi + b になっても確率 pi は変わらないので、Σ(a·xi + b)pi = a·Σxipi + b·Σpi = a·E(X) + b·1 となる。

例題

公正なサイコロは E(X) = 3.5Y = 2X − 1(目を2倍して1を引く)とすると、

E(Y) = 2·E(X) − 1 = 2·3.5 − 1 = 6 − 1 = 6

地道に確かめると:Y は 1, 3, 5, 7, 9, 11 の各値をそれぞれ確率 ⅙ でとり、平均は (1+3+5+7+9+11)/6 = 36/6 = 6。近道と一致する。

結論:E(X) が分かれば、賞金の線形変換 aX + b について新しい表を作る必要はない——平均を直接変換すればよい。

試してみよう 賞金を変換して新しい平均を予測する

公正なサイコロ(E(X) = 3.5)から始める。スケール a とシフト b を変えると、E(aX + b) = a·E(X) + b の値が表示され、変換後の分布を項ごとに計算した結果と照合される。

スケール a 2
シフト b −1

33.7.3 公平なゲーム?期待値が判断する

ここで期待値の真価が発揮される。お祭りの屋台でゲームが開催されている。チケット代を払ってプレイすると、ランダムに賞品が当たる。プレイする価値はあるか?期待値が答えを出す。E(X)(平均獲得額)を計算し、支払った額と比べる。E(X) が価格と等しければゲームは公平——長期的に損得なし。E(X) が小さければ主催者が平均的に得し、大きければプレイヤーに有利だ(そんなゲームは長続きしないが!)。

例題——ルーレット屋台

回転盤が 0.1 の確率で $100.3 の確率で $20.6 の確率で $0 を支払う。平均支払額は

E(X) = 10·0.1 + 2·0.3 + 0·0.6 = 1 + 0.6 + 0 = $1.60

チケット代が $2 なら、1回あたりの純期待値は 1.602 = −$0.40——平均して1回に40セント損する。公平でない。公平なチケット代はちょうど $1.60 だ。

結論:期待賞金がチケット代と等しいときゲームは公平だ。期待値は「プレイすべきか?」という問いを1回の引き算に変えてくれる。

試してみよう チケット代を設定する——ゲームは公平か?

支払表は固定($10 / $2 / $0 の賞品、確率 0.1 / 0.3 / 0.6、E(X) = $1.60)。チケット代をスライドさせると、純期待値 E(X) − 価格が有利(緑)→ 公平 → 損(赤)と変化する。

チケット代 ($)

33.7.4 分散:X はどれだけ揺れるか

2つのゲームが同じ期待値を持ちながら、まったく違う感覚をもたらすことがある。ゲームAは常にちょうど $3 を支払う。ゲームBは確率 ½ で $0、確率 ½ で $6 を支払う。どちらも平均 $3 だが、Aは確実で B はコインフリップのギャンブルだ。期待値だけでは区別できない。揺れを表す数が必要だ。

各値が平均からどれだけ離れているかを測る。これが (xi − E) だ。しかし単純にこのずれを平均することはできない——正と負が打ち消し合ってゼロになる(「重心」の意味そのものだ)。そこでまず各ずれを2乗し(2乗は必ず非負)、その2乗を確率で加重平均する。

分散と標準偏差

D(X) = Σ pi(xi − E)²、  かつ   σ = √D(X)

分散 D(X) は平均からの距離の2乗の加重平均だ。2乗があるため単位が扱いにくくなる(ドル²など)。平方根をとると標準偏差 σ が得られ、X と同じ単位(ドル)になる——「平均からの典型的な距離」として直感的に読める。

例題——A vs B

ゲームA(常に $3):値は確率1で3のみ、ずれは0なので D(X) = 1·(3−3)² = 0σ = 0。まったく揺れない。

ゲームB($0 か $6、各 ½):E = 3、ずれは −3 と +3 なので

D(X) = ½·(0−3)² + ½·(6−3)² = ½·9 + ½·9 = 9、  σ = √9 = 3

期待値は同じ $3 だが、ばらつきはまるで違う:σA = 0σB = 3

結論:分散は2乗されたずれを確率で加重する。その平方根 σ が X の典型的なばらつき幅であり、X と同じ単位で表される。

注意——よくある2つのミス

E(X) は X が実際にとる値である必要はない。サイコロの E(X) = 3.5 だが、3.5 の目は存在しない。期待値は重心であり、予測ではない。

分散は2乗した加重偏差を使う。生のずれを平均してはいけない(打ち消し合ってゼロになる)。確率 pi を忘れてもいけない。正しいのは Σ pi(xi − E)² であり、Σ(xi − E) でも Σ(xi − E)² でもない。

33.7.5 分散の活用:ばらつきが小さいほど安定した賭け

分散も期待値と同様に平行移動とスケーリングに対して扱いやすい性質を持つ——ただし一点だけ違う。純粋な平行移動 b はすべての値を一緒にずらすので、揺れ幅は変わらない:D(X + b) = D(X)。しかし a 倍のスケーリングはすべてのずれを a 倍に引き延ばし、分散はずれを2乗するため 倍になる。

線形変換後の分散

D(aX + b) = a²·D(X)、  したがって   σ(aX + b) = |a|·σ(X)

定数 b を加えると中心はずれるが広がりは変わらない。a を掛けると広がりが |a| 倍(標準偏差)または 倍(分散)になる。

ではリスクの話に移ろう。2つの投資プランが同じ期待リターン E(X) を持つとする。どちらを選ぶか?揺れが小さい方——分散が小さい方——が同じ平均リターンをより安定して、不快なサプライズを減らして届けてくれる。期待値が同じなら、より小さい σ の方が安全な賭けだ。

例題——2つのプラン、同じ平均

プランA:2%、4%、6% のリターンが確率 0.25、0.5、0.25 で発生。 プランB:0%、4%、8% のリターンが同じ確率 0.25、0.5、0.25 で発生。

どちらも E = 2·0.25 + 4·0.5 + 6·0.25 = 4%(B も:0·0.25 + 4·0.5 + 8·0.25 = 4%)。しかし

DA = 0.25·(2−4)² + 0.5·0 + 0.25·(6−4)² = 1 + 0 + 1 = 2  (σA ≈ 1.41%),

DB = 0.25·(0−4)² + 0.5·0 + 0.25·(8−4)² = 4 + 0 + 4 = 8  (σB ≈ 2.83%)。

平均は同じ 4% だが、B の揺れは2倍だ。安定を重視する投資家には、プランAの方が安全な選択だ。

結論:期待値が等しいなら分散が小さい方が勝る——分散はリスクの数学的な名前だ。

試してみよう 同じ平均、異なるばらつき——どちらが安全か?

どちらも E(X) = 4 の2つのプランを並べて表示。プランBの質量を中心から広げると、琥珀色の ±σ 帯が広がる一方、平均は動かない様子を観察しよう。帯が小さい = より安定。

プランBのばらつき

覚えておくべきこと

分布の2つの要約指標
概念公式意味
期待値 E(X)Σ xipi長期的な平均——分布の重心
線形性E(aX + b) = a·E(X) + b平行移動とスケーリングはそのまま通る
分散 D(X)Σ pi(xi − E)²E(X) 周りの2乗ずれの平均
標準偏差 σ√D(X)典型的なばらつき幅、X と同じ単位
分散のスケーリングD(aX + b) = a²·D(X)シフトはばらつきを変えない。a 倍は D を a² 倍にする
リスク原則E が同じなら D が小さい方より安定した(安全な)選択

練習問題

  1. 確率変数 X が値 0, 1, 2 を確率 0.2, 0.5, 0.3 でとるとき、E(X) を求めよ。
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    E(X) = 0·0.2 + 1·0.5 + 2·0.3 = 0 + 0.5 + 0.6 = 1.1。(1.1 は X がとる値ではないが問題ない——これは重心だ。)
  2. 問題1の X について、分散 D(X) と標準偏差 σ を求めよ。
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    E = 1.1 として:D(X) = 0.2·(0−1.1)² + 0.5·(1−1.1)² + 0.3·(2−1.1)² = 0.2·1.21 + 0.5·0.01 + 0.3·0.81 = 0.242 + 0.005 + 0.243 = 0.49。よって σ = √0.49 = 0.7
  3. 公正なコインを1回投げる。表なら X = 1、裏なら X = 0。E(X) と D(X) を求めよ。
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    E(X) = 1·½ + 0·½ = 0.5。D(X) = ½·(1−0.5)² + ½·(0−0.5)² = ½·0.25 + ½·0.25 = 0.25。よって σ = 0.5。(これはベルヌーイの場合:E = p、D = p(1−p) = 0.5·0.5 = 0.25。)
  4. 宝くじが $3。確率 0.01 で $100、確率 0.2 で $5、それ以外は $0。購入は公平な取引か?
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    E(賞金) = 100·0.01 + 5·0.2 + 0·0.79 = 1 + 1 + 0 = $2。チケットは $3 なので、純期待値は 2 − 3 = −$1公平でない——平均して毎回 $1 損する。公平な価格は $2 だ。
  5. X について E(X) = 10、D(X) = 4 のとき、E(3X + 5) と D(3X + 5) を求めよ。
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    E(3X + 5) = 3·E(X) + 5 = 3·10 + 5 = 35。D(3X + 5) = 3²·D(X) = 9·4 = 36(+5 のシフトはばらつきに影響しない。×3 だけが 9 倍にする)。σ は 2 から 6 になる。
  6. プランPは確率 ½ で 3 か 5 を返し、プランQは確率 ½ で 1 か 7 を返す。どちらも平均 4。どちらが安全な賭けか、σ を比較して答えよ。
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    E_P = E_Q = 4。D_P = ½·(3−4)² + ½·(5−4)² = ½ + ½ = 1、σ_P = 1。D_Q = ½·(1−4)² + ½·(7−4)² = ½·9 + ½·9 = 9、σ_Q = 3。期待リターンは同じだが Q の揺れは3倍だ。プランPの方が安全な賭け(σ_P = 1 対 σ_Q = 3)。

🎯 確認クイズ

6問で知識を定着させよう。正しいと思う答えをタップ。

§ 指導者・保護者の方へ

本レッスンでは離散確率変数の2つの要約指標を導入する。期待値 E(X) = Σxipi(確率加重平均・重心)と、分散 D(X) = Σpi(xi − E)² およびその平方根 σ(ばらつきの尺度)だ。CCSS の HSS-MD.A.2・A.3(確率変数の期待値を計算し平均として解釈する)および HSS-MD.B.5 / B.6 / B.7(結果を重み付けし、期待値を使って公平性を評価して意思決定する)に対応する。繰り返し現れる落とし穴は、E(X) が実際にとれる値でなければならないという誤解(サイコロの E = 3.5)と、偏差を2乗せずに、または確率で重み付けせずに分散を計算することだ。次のレッスンでは名前のついた分布——ベルヌーイ、二項、超幾何——と連続正規曲線を学ぶ。

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