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ステージ29 · 空間ベクトルと立体図形

ベクトルで空間の角度を求める

空間のあらゆる角度は、座標から計算できるコサイン一つに帰着する。

14〜18歳向け · 一歩ずつ、丁寧に考える
このレッスンを一枚の図で:方向ベクトル d をもつ直線と、法線ベクトル n をもつ平面が交わる。直線と平面のなす角は dn から直接読み取れる。2直線のなす角も、2平面のなす角も同様だ。空間のあらゆる角度は、座標からコサイン一つで求まる。

空間の角度は難しそうに見える。交わらずすれ違う2本のパイプのなす角、スロープが床となす角、開いた本の背表紙の折り目の角——どれも図に描くのが難しく、まして測るのはさらに大変だ。でも、ベクトルを使えばどれも一つの数に帰着する。直線方向ベクトル d を、平面法線ベクトル n を持たせると、ステージ27の内積 a·b = |a||b|cos θ が各角度を座標から計算できるコサインに変えてくれる。以下の3つの公式は、実は「一つのアイデアを三通りに表したもの」だ——注意深い学習者がつまずくとしたら、符号か絶対値だけだろう。

使う道具はすでに手元にある。29.3 で学んだ直線の方向ベクトルと平面の法線ベクトル29.2 の座標による内積 a·b = x₁x₂ + y₁y₂ + z₁z₂ と長さ |a| = √(x²+y²+z²)、そして2つのベクトルから角度を読み取る公式 cos θ = (a·b)/(|a||b|) だ。直角に座標軸を置いて座標を書けば、どんな空間の角度も計算問題になる。

29.4.1 ねじれの位置にある2直線のなす角

空間の2直線は必ずしも交わらない。ねじれの位置にある2直線は、互いに異なる方向を向き、交点もない——高速道路と脇道のように。頂点となる点がないため、「2直線のなす角」は片方の直線を平行移動してもう一方に当て、そこで測ると定義する。ベクトルを使えば平行移動は不要だ:2直線のなす角は、それぞれの方向ベクトル d₁d₂ のなす角にほかならない。

一つ注意点がある。方向ベクトルはその直線に沿ってどちら向きでもよい——d でも −d でも同じ直線を表す——ので、内積をそのまま計算すると鈍角の値が出ることがある。2直線のなす角は鋭角側(0° < θ ≤ 90°)と定めるため、絶対値で抑える:

cos θ = |d₁·d₂||d₁| |d₂|
方向ベクトルから求める2直線のなす角。分子の絶対値 |·| が鋭角を強制する:どちらかの d の向きを反転しても答えは変わらない。

計算例:一辺 2 の立方体(cubeNamed で設定し、座標は実数)。空間対角線 AC₁= C₁ − A = (2, 2, 2) と面対角線 AB₁= B₁ − A = (2, 0, 2) を取る。すると d₁·d₂ = 2·2 + 2·0 + 2·2 = 8|d₁| = √12 ≈ 3.46|d₂| = √8 ≈ 2.83 なので、

cos θ = |8| / (√12 · √8) = 8 / √96 ≈ 0.82、  θ = arccos(0.82) ≈ 35.26°

実際の立方体の頂点 A から引いた2本の対角線 AC₁→ と AB₁→。円弧は両方向のなす角——内積から計算し、それを描いたもので、図上で測ったものではない。
ポイント

2直線のなす角は、それぞれの方向ベクトルのなす角を鋭角に取ったもの:cos θ = |d₁·d₂| / (|d₁||d₂|)。交点は不要なので、ねじれの位置の直線にも交わる直線と全く同じように使える。

注意(赤)

絶対値を外すと鈍角の「角度」を報告してしまう場合がある。方向ベクトルを −d に反転すると d₁·d₂ の符号が変わるが、直線自体は変わらない——|·| こそが答えを正直で鋭角に保つものだ。

29.4.2 直線と平面のなす角

次は直線を平面に傾けてみよう——スロープが床に当たるように。直線と平面のなす角 θ は、直線とその平面上の(射影)のなす角、つまり直線が平面内のどんな直線とも作る最小の角だ。平面には真上を向いた法線 n がある。ここがポイント:直線の方向 d と法線 n のなす角は θ の余角だ——直線が平面内に寝ているとき法線と 90° をなし、直線が真上を向いているとき法線と 0° をなす。

直線と平面のなす角 θ(直線とその影のなす角)と、直線が法線 n となす角 90° − θ。両者は余角の関係にあり、だから一方のコサインが他方のサインになる。

cos(90° − θ) = sin θ なので、n との角のコサイン公式は、平面との角のサイン公式になる:

sin θ = |d·n||d| |n|
直線と平面のなす角。絶対値が鋭角を強制するのは同じ、ただし関数は cos ではなくsin——ここは丸で囲んで覚えよう。

2つの特殊値で公式を確認しよう。d·n = 0 なら直線は法線に直交するので平面に平行:sin θ = 0、θ = 0°dn なら直線は平面に垂直:sin θ = 1、θ = 90°。計算例:空間対角線 AC₁= (2, 2, 2) と底面(法線 n = (0, 0, 1))。d·n = 2|d| = √12|n| = 1 なので sin θ = 2/√12 ≈ 0.58θ ≈ 35.26°——立方体の対角線が底面から傾く角度だ。

試してみよう 直線を平面に傾けて — sin θ = |d·n|/(|d||n|) を確かめる
平面は床で、法線 n = (0, 0, 1)。直線の方向 d = (水平成分, 0, 垂直成分) を変えてみよう。寝かせると θ = 0°(平行)、真上に立てると θ = 90°(垂直)。
水平成分 dx 2
垂直成分 dz 1
注意(赤)

直線と平面のなす角には cos ではなくsin を使う——なぜなら計算しやすい量 d·n法線との角を測るものであり、直線と平面のなす角はその余角だから。ここで cos を使うと、床ではなく旗竿との角を報告してしまう。

29.4.3 法線ベクトルで表す二面角

二面角とは、一つの辺を共有する2つの半平面の間の開き——開いた本の背表紙、屋根の棟、2つの壁が交わる折り目。昔ながらの測り方は、辺の上に立って各面に辺と垂直な半直線を引き、その2本のなす角を測る。それでも測れるが、空間で垂直な半直線を見つけるのは面倒だ。

ベクトルには近道がある。各面に法線ベクトルがある——第1面に n₁、第2面に n₂n₁n₂ のなす角は二面角と固く結びついている:各法線の向きによって、二面角そのものその補角に等しい。だから次を計算する:

cos θ = ± n₁·n₂|n₁| |n₂|
2面の法線ベクトルから求める二面角。注:ここに絶対値はない——符号と θ・180° − θ の選択は図を読んで決める。

± が付く理由は?法線は面の「外向き」にも「内向き」にも取れる。両方が外向き(または両方が内向き)なら、法線のなす角は二面角の補角になる。一方が外向きで他方が内向きなら二面角そのものになる。計算は数を与える;がそれを保つか 180° から引くかを教えてくれる。このセクションの要は:法線のなす角を計算し、図を見て θ か 180° − θ かを決めることだ。

29.4.4 法線ベクトルで二面角を求める

x 軸を蝶番にした開いた本で、補角の微妙さを具体的に見てみよう。計算例:一辺 2 の立方体、辺 AB に沿った二面角——底面 ABCD と、遠い辺を頂部まで持ち上げた傾斜面 ABC₁D₁ のなす角。底面の法線は n₁ = (0, 0, 1)。傾斜面は AB= (2, 0, 0)AD₁= (0, 2, 2) で張られ、外積を取ると:n₂ = AB→ × AD₁→ = (0, −4, 4)。すると

cos(法線のなす角)= (0·0 + 0·(−4) + 1·4) / (1 · √32) = 4/√32 ≈ 0.71、よって法線は 45° 離れている。

図を読む:傾斜面は底面からゆるやかに立ち上がるので二面角は鋭角——ここでは法線が示す 45° が二面角そのものだ。しかし法線の向きを変えると同じ計算が 135° を示す;両者を区別できるのは図だけだ。下のウィジェットでこれを体験しよう。

試してみよう 本を開く — 二面角と法線のなす角がずれていく様子を見る
2つの半平面が x 軸を蝶番にしている;右側の面を立ち上げてみよう。読み出し欄には真の二面角(見えている開き)と2本の上向き法線のなす角が表示される——両者が常に補角の関係を保つのを確認しよう。
立ち上げ量 2

立ち上げ量が 2 のとき、開いた本の二面角は 135°、一方で(両方上向きの)2本の法線のなす角はわずか 45°——ちょうど 180° − 135° だ。内積だけを見れば「45°」とささやいてくる。本が大きく開いていることを教えてくれるのは図だ。

注意(赤)

二面角は法線のなす角またはその補角——n₁·n₂ の arccos を盲目的に報告してはいけない。二面角の公式に絶対値がないのは、まさに符号と補角が実際の情報を持っているからだ。常に図を一瞥して:開き角は鋭角か鈍角か?

29.4.5 どんな角度にも使える手順

公式は3つ、習慣は一つ。どんな角度でも、座標を置いて対応するコサインを取り出す:

なす角の対象使うベクトル公式注意
2直線(ねじれも含む)方向ベクトル d₁, d₂cos θ = |d₁·d₂| / (|d₁||d₂|)鋭角——|·| を保つ
直線平面方向 d、法線 nsin θ = |d·n| / (|d||n|)sin、cos ではない
2平面(二面角)法線 n₁, n₂cos θ = ± n₁·n₂ / (|n₁||n₂|)θ か 180° − θ か:図を読む

完全な計算手順——立方体の底面対角線と空間対角線のなす角。(i) 頂点 A に座標軸を置く。(ii) 座標を書く:底面対角線の方向は AC= (2, 2, 0);空間対角線は A₁C= C − A₁ = (2, 2, −2)(上の頂点 A₁ から対角の底の頂点 C へ向かう,|A₁C→| = √12 = 2√3)。(iii) これらは直線の方向なのでねじれ直線の公式を使う。(iv) d₁·d₂ = 2·2 + 2·2 + 0·(−2) = 8|d₁| = √8|d₂| = √12(v) cos θ = 8/(√8·√12) = 8/√96 ≈ 0.82、よって θ ≈ 35.26°。同じ5ステップ——座標軸、座標、ベクトル、公式、答え——でどんな立体のどんな角度も解ける。

ポイント

空間の角度を二度と当てずっぽうにしなくていい。適切な dn を見つけ、表の対応する行を選んで代入する。難しかった幾何学が、内積と平方根になった。

まとめ・次へ持ち越すもの

角度は3種類、公式は3つ、考え方は一つ:幾何をベクトルに変え、内積から角度を読み取る。

角度の種類公式関数注意
直線と直線(ねじれも)cos θ = |d₁·d₂| / (|d₁||d₂|)cos|·| を保つ → 鋭角
直線と平面sin θ = |d·n| / (|d||n|)sinn との角の余角
平面と平面(二面角)cos θ = ± n₁·n₂ / (|n₁||n₂|)cosθ か 180° − θ か——図を読む

覚えておきたい特殊値:直線と平面で d·n = 0 ⇒ θ = 0°(直線 ∥ 平面)、d ∥ n ⇒ θ = 90°(直線 ⊥ 平面)。ねじれと直線−平面の公式は常に絶対値を取る;二面角の公式は絶対に取らない——これが最もすっきりした覚え方だ。次の 29.5 では、角度を与えてくれた同じ法線ベクトルが距離を与えてくれる:点と平面の距離は、n への影の長さだ。

練習問題

  1. 2直線の方向ベクトルが d₁ = (1, 2, 2)d₂ = (2, 2, 1) である。2直線のなす角を求めよ。
    答え
    d₁·d₂ = 1·2 + 2·2 + 2·1 = 8|d₁| = √9 = 3|d₂| = √9 = 3。よって cos θ = |8|/(3·3) = 8/9 ≈ 0.889θ ≈ 27.27°。(内積がすでに正なので、|·| は結果を変えなかった。)
  2. 直線の方向ベクトルが d = (1, 1, 1)、平面の法線ベクトルが n = (0, 0, 1) である。直線と平面のなす角を求めよ。
    答え
    直線と平面には sin を使う:d·n = 1|d| = √3|n| = 1。よって sin θ = |1|/(√3·1) = 1/√3 ≈ 0.577θ ≈ 35.26°。(cos ではなく sin を使う——計算しやすい d·n は法線との角を測るものだから。)
  3. 2平面の法線ベクトルが n₁ = (1, 0, 0)n₂ = (1, 0, 1) である。図は2平面が鈍角の折れ目で広がっていることを示している。二面角を求めよ。
    答え
    n₁·n₂ = 1|n₁| = 1|n₂| = √2、よって cos(法線のなす角)= 1/√2 ⇒ 法線は 45° 離れている。折れ目は鈍角なので二面角は補角:180° − 45° = 135°。(45° と 135° のどちらかは図を読んで決める。)
  4. 頂点 A を原点とする一辺 2 の立方体で、空間対角線 AC₁= (2, 2, 2) と辺 AB= (2, 0, 0) のなす角を求めよ。
    答え
    AC₁→·AB→ = 2·2 + 2·0 + 2·0 = 4|AC₁→| = √12|AB→| = 2。cos θ = |4|/(√12·2) = 4/(2√12) = 2/√12 ≈ 0.577、よって θ ≈ 54.74°——立方体の長い対角線が辺となす有名な角度。
  5. 直線と平面の公式がサインを使い、ねじれ直線の公式がコサインを使うのはなぜか。「余角」という語を用いて1〜2文で説明せよ。
    答え
    内積 d·n は直線と平面の法線のなす角を直接測る。直線と平面のなす角 θ はその余角(90° 引いたもの)であり、cos(90° − θ) = sin θ なので、n を使ったコサイン公式が直線と平面のなす角のサイン公式になる。
  6. ある学生が2面の法線で n₁·n₂ < 0 を計算し、「二面角は鈍角だから図を見なくていい」と言った。この推論は安全か?信頼できる手順は何か?
    答え
    いや、安全ではない。法線はどちら向きにも取れるので、n₁·n₂符号は幾何が決めていない選択に依存する。信頼できる手順:法線のなす鋭角を(|n₁·n₂| を使って)計算し、図を読んで二面角がその角度かその補角 180° − それかを決める。

🎯 確認クイズ

6問で定着させよう。正しいと思う答えをタップしてね。

§ 教師・保護者の方へ

このレッスンは高校のベクトルと行列の学習領域(HSN-VM)に位置づけられる:空間ベクトルを導入し、スカラー倍を行い、内積を使って角度を読み取る——ここでは3種類の空間の角度(直線と直線、直線と平面、二面角)を扱う。また、スロープ・屋根・結晶面など実際の立体に関する問いを座標計算に変換することで、幾何モデリングの学習領域(HSG-GMD および HSG-MG)にも貢献する。繰り返し現れる学びは計算技術よりも概念的なもの:内積は一つの道具だが、各角度には適切な設定が必要だ(直線の角には絶対値で鋭角に;直線と平面の角にはサイン;二面角には θ か 180° − θ かを図で判断する)。計算を信頼する前に必ずスケッチして「鋭角か鈍角か?」と問うよう生徒を促してほしい。

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