法線に影を落とせば、座標から直接距離が読み取れる。
これがこの単元の最終ご褒美だ。空間での「どれくらい離れているか?」という問い——この角はあの斜めの面からどれだけ離れているか? 平行な2枚の棚の隙間はどのくらいか?——は、これまで補助垂線を引き、辺の迷路の中で直角三角形を探し回ることを意味していた。そのすべてを消し去ろう。使うのは、これまでのレッスンと同じトリックだ: 距離は影の長さであり、影は内積である。直角の角に座標を設け、平面の法線 n を書き留め、目標点への矢印をその法線に射影すれば、距離は一つの商として出てくる: d = |QP→·n| ⁄ |n|。直線や平行な平面も同じ公式に帰着し、5ステップのルーティンが平行・垂直・角度・距離を一度の計算でまとめてくれる——ステージ30・解析幾何学への扉だ。
以降の内容はすべて、ステージ27の内積——その幾何学的意味が、まさにこれから投じる影そのもの——と、29.2(座標)・29.3(平面の法線 n)・29.4(あらゆる角を一つの余弦で表す)の空間ベクトルの道具立てに依拠している。それらが不安であれば戻って確認を; そうでなければ先へ進もう。
直線に真上から光を当てると、矢印がその上に影を落とす。この影が射影であり、内積の幾何学的な中身はすべてここにある。ベクトル a と方向 b をとる。a の先端から b の直線に垂線を下ろすと、共通の始点から足までの線分が a の b への影だ。
その符号付きの長さ——スカラー射影——は
a の b へのスカラー射影 = a·b|b| 。
なぜか? a·b = |a||b|cos θ なので、|b| で割ると |a|cos θ が残る——これがまさに影である直角三角形の辺だ。符号は情報を持っている: 影が b と同じ向きなら正(θ が鋭角)、a ⊥ b ならゼロ(影が一点に縮む)、影が逆向きなら負(θ が鈍角)。ベクトル射影はスカラーに方向を戻したもので、単位ベクトル b̂ = b⁄|b| を掛ければよい。
a = (2, 2, 1)、b = (3, 0, 0) とする。a·b = 2·3 + 2·0 + 1·0 = 6、|b| = √(9+0+0) = 3。よってスカラー射影は 63 = 2、ベクトル射影は 2·b̂ = 2·(1, 0, 0) = (2, 0, 0) ——a がどれだけ高く立っていても、x 方向に 2 単位進んでいることがわかる。足での直角こそが肝心な点: 落とした垂線が perpendicular なので、影は a にもっとも近い b の定数倍だ。
今度は光を平面の法線 n に沿って当てよう。核心の図はこうだ: 点 P が平面 α の上方に浮かんでいて、求めたい距離は P から平面への垂直な落下の長さだ。その落下は n の方向に走る(法線とは定義上、平面に垂直なものだから)。つまり距離は、結ぶ矢印の n への影にすぎない。
平面上の任意の点 Q をとり、矢印 QP→ = P − Q を作る。単位法線 n̂ への影の長さは |QP→·n̂| で、これが垂直落下だ。n̂ = n⁄|n| と書けば:
d = |QP→·n||n| 。
絶対値をとるのは、符号付きの値でなく長さが欲しいから——P は平面のどちら側にもありうる。そして答えは、平面上のどの点 Q を選んでも変わらない: Q を別の点 Q′ に動かすと矢印が QQ′→ だけ変化するが、これは平面の中に寝ているので n ⊥ ——その n への影はゼロだから商は不変だ。この自由さがこの公式を使いやすくしている: 一番都合のよい角を使えばよい。
平面 α: x + 2y + 2z = 1、法線は n = (1, 2, 2)、|n| = √(1+4+4) = 3。平面上の Q = (1, 0, 0) と目標点 P = (2, 2, 2) をとる。QP→ = P − Q = (1, 2, 2) で、QP→·n = 1·1 + 2·2 + 2·2 = 9。よって d = |9|3 = 3。垂線の足は (1, 0, 0) に戻り、ちょうど平面上に乗る——補助三角形は一切不要だ。
1. 距離は n への影であり、平面に沿った影ではない。垂線は α に垂直——法線への射影だ。QP→ を平面の内に寝ているベクトルに射影すると、面を横切る距離になってしまい、求めるものとは逆になる。面への影 ≠ 面までの距離。
2. |n| で割ること。公式は単位法線を必要とする。n が単位ベクトルでない場合——たいていそうだが——分母の |n| を忘れると答えが |n| 倍に膨らむ。この例なら 3 の代わりに 9 が出てしまう。
3. 平面上の任意の Q でよいが、平面上でなければならない。Q は実際に平面の方程式を満たす点でなければならない; 近くにある無関係な点を使うと静かにすべてが狂う。
点と平面の公式の美しさは、どれだけ多くのものを飲み込めるかにある。
直線 ∥ 平面。直線が平面に平行なとき、直線上のすべての点は平面からちょうど同じ高さにある(それが平行の意味だ)。したがって直線と平面の距離は、直線上の任意の一点の点と平面の距離だ。計算一回で完了。
平面 ∥ 平面。二つの平行な平面は一定の幅だけ離れている。第一の平面上の任意の一点をとり、第二の平面までの距離を測れば、それが隙間だ。平面と平面の問題も点と平面に帰着する。
点から直線への距離。点 P から直線 ℓ(方向 d、点 A を通る)への距離は、AP→ の垂直成分——ℓ に沿った部分を取り除いて残りを保つ。記号で書けば、矢印からベクトル射影を引く:
d = | AP→ − (AP→ の d への影) | = | AP→ − AP→·d|d|2 d | 。
同じ考え方を鏡写しにしたもの: 平面では法線への影を保ち、直線では方向への影を捨てて残りを保つ。どちらにしても、距離は射影だ。
空間での「平行か・垂直か・角度は・距離は」という問題は、すべて一つのチェックリストに従う。5つの手順を覚えれば、巧みな補助線はもう二度と必要ない。
| ステップ | やること | 道具 |
|---|---|---|
| 1 | 直角の角を見つけ、その三辺に沿って x, y, z 軸を置く。 | 立方体・直方体の角 |
| 2 | 関係するすべての点の座標 (x, y, z) を書き出す。 | 箱から読み取る |
| 3 | 必要な方向ベクトル d(B − A)と法線 n(n = u×v)を作る。 | vsub3, vcross3 |
| 4 | 適切な公式に代入する——⊥ なら内積、∥ なら定数倍、角度なら sin/cos、距離なら |QP→·n|/|n|。 | vdot3 |
| 5 | 答えを読む——図と見比べてサニティチェック。 | 結論 |
かつて幾何学的だった作業——適切な垂線を見つけ、直角三角形に名前を付ける——はステップ1だけに置き換えられた。角を選んだ後は、三つ組の数値への純粋な計算だ。
四つすべての関係を同時に問う問題を一つ解いてみよう。5ステップが一度のセットアップで片付ける様子を見てほしい。一辺 2 の立方体を取り、角 A に軸を置くと:
A(0,0,0) B(2,0,0) C(2,2,0) D(0,2,0)、上面は A₁(0,0,2) B₁(2,0,2) C₁(2,2,2) D₁(0,2,2)。
(a) 平行か?上面の対角線 A₁C₁ は底面 ABCD に平行か? 方向 d = C₁ − A₁ = (2, 2, 0); 底面の法線は n = (0, 0, 1)。d·n = 2·0 + 2·0 + 0·1 = 0 を確認。よって d ⊥ n、かつ A₁C₁ は底面にないので、A₁C₁ ∥ 底面。
(b) 垂直か?辺 AA₁ は底面に垂直か? AA₁ = (0, 0, 2) = 2·(0, 0, 1) = 2n——底面法線のスカラー倍。方向 ∥ 法線は AA₁ ⊥ 底面 を意味する。(垂直な辺は床に立つ; 代数も一致する。)
(c) 角度は?空間対角線 AC₁ = (2, 2, 2) と底面のなす角は直線–平面の公式 sin θ = |d·n|/(|d||n|) を使う。d·n = (2, 2, 2)·(0, 0, 1) = 2、|d| = √12 = 2√3、|n| = 1 なので、sin θ = 22√3 = 1⁄√3 ≈ 0.577、θ ≈ 35.3°。
(d) 距離は?角 C = (2, 2, 0) から A・B₁・D₁ を通る斜め平面までの距離。張るベクトル u = B₁−A = (2, 0, 2)、v = D₁−A = (0, 2, 2) なので、n = u×v = (−4, −4, 4)、|n| = 4√3。Q = A をとると QC→ = (2, 2, 0) で、QC→·n = −8 − 8 + 0 = −16。よって d = |−16|4√3 = 4⁄√3 ≈ 2.31。一度の座標設定で四つの答え。
描かなかったものに注目しよう: 補助垂線も、余分な三角形も一つもない。ステップ1(A に軸を置く)がすべての重荷を引き受け、ステップ2〜5は算術だった。これが空間ベクトルの報酬——幾何学が計算になる。
一歩引いて、幾何学に何が起きたかを見てみよう。点は数の三つ組になった。直線は点と方向ベクトルになった。平面は点と法線になった——あるいは同等に、x + 2y + 2z = 1 のような方程式になった。その係数が法線そのものだ。平行・垂直・角度・距離: すべてがその数値への算術に変わった。
次の自然なステップは逆の取引だ。平面が方程式で捉えられるなら、円・放物線・楕円も方程式で捉えられるのではないか——そして方程式が曲線を描くようにできるのではないか。それがステージ30・解析幾何学のプログラムだ: 座標が方程式になり、方程式が曲線になる。橋はもう架けた; 次のステージで渡ろう。
空間のあらゆる距離は射影であり、あらゆる射影は内積だ。この表を手元に置いておこう。
| 求めるもの | 公式 | 言葉で |
|---|---|---|
| a の b へのスカラー射影 | a·b|b| | a の b への影の符号付き長さ |
| a の b へのベクトル射影 | a·b|b|2 b | その影に方向を戻したもの |
| 点 P から平面 α | |QP→·n||n| | Q は平面上の任意の点; 法線への垂直落下 |
| 点 P から直線 ℓ | |AP→ − projdAP→| | d に沿った部分を捨て、残りを保つ |
| 直線 ∥ 平面、または平面 ∥ 平面 | = 点から平面の距離 d | 一点を測れば——すべての点が同じ距離 |
そして5ステップ・ルーティン: 角を置く → 座標 → 方向・法線 → 公式 → 答え。
影を落とす。a = (1, 2, 2) の b = (0, 0, 4) へのスカラー射影とベクトル射影を求めよ。
点と平面。P = (4, 1, 2) から平面 2x + y + 2z = 4 までの距離を求めよ。
分母を忘れずに。ある生徒が原点から平面 x + 2y + 2z = 6 までの距離を計算して d = 6 と書いた。何を忘れたのか、そして正しい答えは何か?
立方体の中で。一辺 2 の立方体、軸は A に: A(0,0,0)、B(2,0,0)、C₁(2,2,2)、D(0,2,0)。A・C₁・D を通る平面から B までの距離を求めよ。
点から直線へ。P = (2, 2, 2) から x 軸(O を通り方向 d = (1, 0, 0) の直線)までの距離を求めよ。
平行な隙間。同じ一辺 2 の立方体で、上面の対角線 A₁C₁ が底面 ABCD に平行であることを示し、その距離を求めよ。
6問で定着させよう。正しいと思う答えをタップしてね。
このレッスンはこの単元のモデリングの成果だ: 難しい立体幾何学の距離を一度の内積計算に変えてしまう。ベクトルの道具立て——射影・単位法線・点と平面の公式 d = |QP→·n|/|n|——はHSN-VM(ベクトルと行列の量)の核心にある。座標を使って立体をモデル化・測定すること——角に軸を置き、立方体の中の高さ・隙間・角度を求めること——はHSG-GMD・G-MG(幾何学とモデリング)の幾何学的モデリングの作業だ。家庭での良いプロンプト: 数値に触れる前に5ステップを声に出して言わせてみよう——「角・座標・方向と法線・公式・答え」という規律は、個々の計算よりずっと長持ちし、ステージ30(解析幾何学)が報いてくれる思考習慣そのものだ。